
リーフタンクを始める前に、考えたいリスクとコスト
華やかなコーラルに鮮やかな熱帯魚たち。その姿に魅力を感じて、リーフタンクを考えはじめる人は多いと思います。しかし、流行や流れに乗って軽い気持ちでやりはじめるとリーフタンクのメンテナンス中に起こる思わぬアクシデントや、かける時間と労力に疲労を感じ”こんなはずじゃなかった”となる事があります。
この記事では、リーフタンクをやる上で外せない水槽設置リスクを紹介していこうと思います。
リーフタンクをやる上で考えたいリスク
サンゴ水槽や海水魚水槽は一番小さくてW600xD300xH400mmです。そして、海水水槽を稼働させていくには様々な電子機器機材が必要で、また淡水アクアリウムと違いろ過装置を水槽とは別に必要となります。なので部屋のレイアウトやスペースの確保が鍵となってきます。
ただ、リーフタンクをはじめるにあたって現在の住居環境によっては規模を小さくはじめるか、もしくは断念せざるを得ない場合があります。しかし、”備えあれば憂いなし”というように正しくリスクを理解しリスクヘッジや備えをしておけば大抵の問題は解決でき、より良いリーフタンクライフを楽しめます。
ではまず具体的にどういうリスクがあるかみていきましょう。
賃貸物件でのリスク
まず、賃貸物件でのフィジカルリスクです。賃貸物件でリーフタンクをはじめる時は温度の低下や震災の際の水槽のひび割れなどで床が浸水したり、リーフタンク自体が崩壊するリスクがあります。また、リーフタンクを設置する階層が2階以上だった場合、床の耐荷重の影響を受け震災の際に底抜けし想定以上の被害を被ったり搬入に金額がかかってしまうなど金銭トラブルにつながる場合もあります。
- 1階
- 2階以上
🔹季節による気温の低下や上昇によりリーフタンクの温度が上下すると生体が死滅する可能性がある
🔹床下収納がある場所だと、漏水した際に物が水浸しになる
🔹近くに電子機器が多いと海水による塩害の被害を受ける可能性がある
🔹コンセント類に水がかかり漏電が起きるとコードが発火し火災の危険性がある
🔸震災の際に下の階へ漏水する可能性がある
🔹搬入の際に金額が上がる
🔹近くに電子機器が多いと海水による塩害による故障が起きる可能性がある
🔸コンセント類に水がかかり漏電が起きるとコードが発火し火災発生の危険性がある
1階ではじめる際にリスクはあるのですが、それ以上に2階で水槽をはじめた場合に”下の階の住人”と直接的なトラブルになるためより慎重に判断しなければいけません。
また、自宅内の水槽の配置についてもテレビやパソコンなど塩害の被害を受けそうな大型の電子機器の近くには置かないことをお勧めします。
戸建て物件でのリスク
戸建て物件は持ち家か賃貸で状況は変わりますが、賃貸戸建てに関してはマンションと重なるのでここでは持ち家でのリスクについて書いていきます。
持ち家の場合、リーフタンクを導入する際に築年数で大きく変わることがあってそれは”不動産査定に響く可能性があるかどうか”という点です。生体が死滅する可能性や身近な事故についてももちろんそうですが震災が起きた場合や水槽のメンテナンス中に起きる事故によっても左右されます。これはマンションのリスクについてもそうでした。ただ、それ以上に持ち家は”将来的に売却する可能性があるかどうか”で水槽を持つことがもしかしたらリスクとなる可能性があることを考えなければいけません。
例えば、築25年以内で物件を売却を考えている際に150cm水槽の置き場所を間違えて導入すると、壁紙や家屋の状態に支障をきたす場合が考えられます。
- 築25年未満
- 築25年以上
🔹壁紙や家屋に海水の蒸発する塩による被害をきたす場合がある
🔹換水の際に海水がこぼれて床材が劣化する
🔹近くに電子機器が多いと海水による塩害の被害を受ける可能性がある
🔹コンセント類に水がかかり漏電が起きるとコードが発火し火災の危険性がある
🔹壁紙の劣化に海水が追い討ちをかけ、壁紙にカビが発生する場合がある
🔹配管や排水に故障があると実費で修繕費用を賄わないといけない
🔹井戸水を利用している場合は、浄水工事をする際に数十万円と費用がかかる
🔹海水が蒸発する塩の被害によって家屋の老朽化が進む可能性がある
特に注意すべきは築25年以上の物件だと、元々の家屋の状態や形式が古く水槽を初めてみて見つかる問題点も多々あります。
<具体例その1>
築30年で水槽を導入したら、壁材が古く湿度がこもりやすい作りだったために水槽の壁面一帯がカビだらけになってしまった。
これは、以前私が住んでいたUR賃貸、いわゆる団地をリノベーションした物件だったのですが壁紙も古く通気性が最悪でさらに、海水の水温は常に25°前後で保たれるためあっという間にカビに侵食されてしまいました。

それまでは築年数の浅い物件に住んでおり、ここまで壁紙がひどくカビることがなかったので本当に驚きましたし、賃貸なので退去の際に請求されたりするのでは無いかと思いヒヤヒヤしました。結果的には大家さん都合での退去となったので特に請求されることは無かったです。また、私たちは加入している自動車保険に生活賠償の補償があったのでそこまで深く考えずに済みましたがもし古い古民家や中古戸建てでリーフタンクを始めようと思う方がいれば入っている保険に生活賠償の補償があるか、もしくはなければ保険の見直しを行うかして対策を考えておいた方が良いです。
築年数が長い物件だとどうしても通気性が悪く、壁面がカビやすくなったりします。今回は退去時になんとか了承をえられたものの、大家さんや管理会社が違えば大惨事になっていたことは間違い無いでしょう。
賃貸・中古物件でリーフタンクを始める際は必ず生活賠償のある保険を検討しましょう。
<具体例その2>
築15年ほどの家屋だが、ずっと井戸水を使用していたのだが硝酸塩の数値が高く浄水工場を思い切ったら80万円ほどかかってしまった。
これは、私たちが住居を賃貸から親の持ち家へ引っ越した際に起きた出来事です。引っ越した先は築15年の戸建てなのですが店舗併設で飲食業を営んでたこともあって経済的な側面から井戸水を引く形をそれまでとっていました1。その井戸水でこれまでのリーフタンクを移動させ再度立ち上げたのですが、海水魚はウーディニウム2に感染し全滅、サンゴはもっての他、硝酸塩数値が異常となりしばらく何も入れられない時期がありました。
そこで両親と相談し、娘たちもいるので将来的にみて浄水工事を行うことができたのですがその際にかかった費用としては80万弱でした。
もしかしたら戸建てを建てる際に同時に浄水工事を行えばもっと割安で済んだ可能性もあるのでここではタラレバの話となってしまうのですが、もし新築で戸建てにリーフタンクを導入検討する方は一度水道工事の面も考慮した方がいいと思います。
井戸水は硝酸塩数値が上がりリーフタンクには適していないので必ず浄水かどうかの確認を
築年数が長い物件だとどうしても通気性が悪く、壁面がカビやすくなったりします。実際管理人も割安の団地アパートに住んでいた時があり、その時海水魚水槽をやっていましたが水槽を設置している壁面上部にカビが生えてしまいました。退去時になんとか了承をえられたものの、大家さんや管理会社が違えば大惨事になっていたことは間違い無いでしょう。
賃貸でも戸建てでも起こりうる共通のリスク
賃貸と戸建てと分けてこれまでリスクを紹介しました。賃貸と戸建てで特に保険関係の補償内容が変わってくるためこれまで分けて説明しました。このトピックでは賃貸と戸建て、そのどちらでも起こりうるリスクにフォーカスして書いていこうと思います。
漏電による発火事故

これは、主要電源のコンセントにカバーをかけずリーフタンクを立ち上げた数日後にトラッキング現象3で大元から発火した例です。黒いススの部分まで発火しましたがコンセント自体は無事でした。結構大きな光を放って発火し消滅したんですが、正直心臓に悪い状況です。原因としては塩ダレや埃による湿度上昇だと思ったのでコンセントカバーをつけるようになってからは一度も起きて無いです。
また、リーフタンクのコードや配線の作業をする際に何も考えずに始める人がいるのですがこれはかなり危険なので絶対にやめてください。
水槽の大小・新旧・スペック等は全く関係なく、自宅でメンテナンスをする際は必ずブレーカーか主要電源を落としてください。アクアリウムショップや店舗ではそもそも電力のアンペア数が違い最初の設計時点で多くのリスクを考慮した上でプロが水槽の配置レイアウトと配線コードを設置しています。
たこ足配線のスイッチのON・OFFで解決しようと考える人も多いですが、正直どのコードが何に繋がっているか覚えていない人がほとんどです。
なので、コードや配線を触る際は水槽につながるブレーカーを落とし、短時間で作業するのが一番安全です。また、熱帯魚の病気の発見やサンゴの養生などにより水槽全体の大掛かりな作業になる場合は別のケースにサンゴや魚たちを移動させておくことをお勧めします。

コード配線を触る作業や水槽の大掛かりな作業をする際はブレーカーを落とす。乾いてからブレーカーを入れる。(漏電防止)
水槽作業中に起こる感電
これは漏電による事故と共通する部分が多いですが、とにかくリーフタンクを設置した場合水槽関連機材で電気を必要とするものが多いです。電気を使用するヒーターや照明、フィルターなどの配線が水に濡れたり、故障したりすると、感電の危険性があります。また、魚やサンゴは微弱の電流に関してはほとんど影響を受けないため水槽内に漏電していることを発見するのは難しいです。特にポンプやヒーターなどが故障して水槽内に電気が流れ、いつものように作業をしようと水面を触ると感電したなんてこともあります。
水槽の重量による床抜け・歪みの発生

水槽は通常の家具とは違い水の重量が関わってくるので、通常の床の耐荷重では耐えられない場合があります。上の図は容量=重量で水槽ごとの重さがわかる一覧になっていますが水槽をやり始めようと思ってる人の大半が考える90cmの大きさの水槽でも324kgの重さになります。一見丈夫そうに見える床でも賃貸・戸建てで180kg/㎡の計算なので300kgも超えてくるとなかなか厳しいものがあります。
なので、SNSやYoutube などを見て初めてみようかなと思う方も多いと思いますがあくまで自身の居住スペースに合った大きさの水槽を導入するようにしましょう。

震災時や非常時の停電による生体の維持リスク
地震の多い日本ですので生活しながら常に震災リスクヘッジをしておいた方がいいのですが、水槽設置に関しても例外なく当てはまります。実際地震が起こると水槽のひび割れ、破損が起きると漏水の被害が出ますし、停電してしまうと水槽が止まってしまい生体の生命維持のリスクが出てきます。
なのでポータブル蓄電機か自家発電機など用意しておくと少しは安心かと思います。
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水槽設置リスクを解消する為に事前にやっておきたいこと
住んでいる居住物件が水槽を始めるのに適しているかどうか
賃貸の方は必ず担当の不動産や大家さん、もしくは管理会社に確認をとって言質をとっておきましょう。ペット可の物件でも水槽となると話は違うという場合もあるので貸主に直接確認取るのが一番です。
水槽作業前のチェックシート
これは実際に設置した後の作業についてのチェックシートです。設置した後も水換えや水槽の清掃などメンテナンスが定期的に行う必要があるので項目を自分で記入して用意しておくと便利です。

もし、リーフタンク初心者で何をどう気をつければいいかわからない人はチェックシートを用意しましょう。また、震災の時と分けて防災チェックシートなどを用意しておくのも良いでしょう。
設置しようと思っている水槽について調べる
調べるポイントとしては
・水槽のサイズと容量、特に床の耐荷重
・どのくらい生体を入れたいか
・その水槽を搬入するスペースの余裕や高層階ならエレベーターがあるかどうか
・部屋の間取りやレイアウト、設置場所のスペース確認
水槽は一度設置してしまうとそう簡単には動かせません。実際60cmの中型の置き型淡水水槽でも65kgあり、いざ部屋の模様替えなんか考えた時に中の水量を減らさないとなかなか場所移動ができません。なので慎重に考える必要があるのです。
水槽設置のリスク解消には、事前の確認が不可欠です。最初に住んでいる居住物件が水槽を始めるのに適しているかどうか管理規約や構造を確認し、重量制限や水漏れ対策について管理会社に問い合わせましょう。次に、設置しようと思っている水槽について調べることが重要です。サイズ、重量、必要な設備、そして万が一の際の保険についても検討しましょう。これらの確認と対策を行うことで、水槽のある暮らしを安心して楽しむことができます。


リーフタンクにおけるコストの話
リーフタンク導入でかかるコスト
リーフタンクを始めるには、とにかくお金がかかります。初期費用ももちろん維持費もかかります。日々の生活を彩るために始めたリーフタンクがいつの間にか生活の重しに…なんて事もよくあります。特に子どもが増えたり、転勤や引っ越しなど急なライフプランの変動によってこれまで安定的に続けられたリーフタンクを泣く泣く手放す事になってしまった、そんな方もいるでしょう。
そこで、そうならない為にもここでは事前にどのくらい金額としてかかるのか目安にして参考にしてもらえたらと思います。ただし、水槽のサイズ、飼育するサンゴの種類、使用する機材のグレードによって大きく変動することがありますので留意しておいてください。
初期費用
- 水槽・ろ過BOX
小型(30~45cm)で約2~5万円程度
中型(60~90cm)で約5~15万円程度
大型(120cm以上)になると大体20万円以上
になることもあります。また、オーバーフロー水槽4は高価になる傾向があります。 - 照明: サンゴの種類によって必要な光量が異なり、LEDライトが主流です。
小型水槽用で約1~3万円程度
中型水槽用で約3~10万円程度
大型水槽用ではおおよそ10万円以上になることもあります。 - プロテインスキマー
水中の有機物を除去するろ過機材です。小型水槽用で1~3万円程度、中型水槽用で3~8万円程度、大型水槽用では8万円以上になることもあります。 - 水流ポンプ
水槽内の水の流れを作りサンゴに栄養を届け、老廃物を排出するのに役立ちます。小型水槽用で5千円~2万円程度、中型水槽用で1~5万円程度、大型水槽用では数個必要になる場合があり、数万円以上になることもあります。特にリーフタンクに関しては水流でサンゴの調子が変わってくる場合もあるのでスペックを落としにくい機材です。 - ヒーター・クーラー
水温を一定に保つために必要です。ヒーターは数千円程度から、クーラーは小型でも3万円程度から、大型になると10万円以上になることがあります。 - 底砂・ライブロック
底砂は数千円程度から、ライブロックは量によって大きく異なり、1kgあたり2千円~5千円程度が目安です。 - 人工海水・比重計・水温計
初回に必要な量で数千円程度です。 - 水質測定試薬・検査キット
複数種類揃えると1万円程度になることがあります。 - その他: バケツ、ホース、掃除用品などで数千円程度。
維持費(月額)
- 電気代
照明、ポンプ、ヒーター、クーラーなどの使用量によって大きく変動します。小型水槽でも数千円、大型水槽では1万円を超えることもあります。 - 人工海水を作るための水道代
換水頻度と水量によりますが、数千円程度。 - 添加剤
サンゴの成長や維持に必要なカルシウム、マグネシウム、KHなどの添加剤は、種類や使用量によって数千円程度かかることがあります。 - 水質測定試薬
定期的に使用するため、数百円~数千円程度。 - メンテナンス用品
フィルター、活性炭などの消耗品で数百円~数千円程度。 - 生体(サンゴ・魚など)
新たに追加する場合、種類やグレードによって数千円から数万円以上になることがあります。 - 予期せぬ故障: 機材の故障やトラブルによる修理・交換費用も考慮しておく必要があります。
初期費用の目安
- 小型水槽(30~45cm): 5万円~15万円程度
- 中型水槽(60~90cm): 15万円~40万円程度
- 大型水槽(120cm以上): 40万円以上
維持費の目安(月額)
- 小型水槽: 5千円〜1万円程度
- 中型水槽: 2〜3万円程度
- 大型水槽: 5万円以上
リーフタンクは初期投資も維持費も決して安くはありません。しかし、美しいサンゴの成長を日々観察し水中世界を自宅で楽しめる魅力があります。始める前にしっかりと情報収集を行い、予算を考慮した上で計画を立てることが大切です。
リーフタンクの導入の仕方
多くのリスクとコストが理解できたかと思いますが、これらを踏まえた上でどういう形でリーフタンクを始めていくのが最適か考えてみましょう。
主な必要備品の入手経路
まず、ここでリーフタンクを始めるのに最低限必要となる備品をどういう形で入手していくといいのか考えていきます。
・オーバーフロー水槽
・ろ過BOXと配管類
・水流ポンプ
・育成ライト
・水槽用ヒーター、クーラー
・水槽用キャビネット
・ろ材やライブロックなどの生物ろ過材
・殺菌灯
・プロテインスキマー
・給水ポリタンクと揚げ水ポンプ
また、ショップ
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